徒然なるままに…

大江戸和子の店長が着物で過ごす日常を綴る…

  • 2010.07.07 Wednesday

温風至−オンプウイタル−



雨あがりの夕刻。
黒い雲。ひとしきり降った夕立。

ムッと押し寄せる、重量感のある気配の内から涼風が立ち、
ふと甘い香りに鼻孔をくすぐられた一瞬…。


湿り気を帯びて濃厚さを増したその芳香には、確かな存在感を
感じさせられます。

でも紫陽花のように目立つこともなく、静かに咲いてはすぐに色褪せてしまう…


梔子…花ひらくとともに清純な白さが現れます。

甘い香りを花びらの一枚一枚にたっぷり含んでいるような
そして全く汚れのない白色の花。

その真白に鼻先を近づけて瑞瑞しい芳香に酔うひと時…。

人工的には製造できない、化学香料の集結でもない清らかな甘い灯。

梔子をみかけるとつい引き込まれ、いく度も顔を近づけ目を閉じては
立ちつくして甘香の余韻に浸ります。


―それはやがて梅雨が明け、夏空に映える向日葵が太陽に顔を向ける姿を
みる日々が訪れるまでの、この時期だけの微かな楽しみごとのひとつと
なりました。

どんよりと、ジメジメが不快指数を上昇させる季節ですけれど
みなさんはどのような素敵な楽しみごとをしていらっしゃいますか?






| 季節の便り | 16:12 | ↑TOP
  • 2010.03.23 Tuesday

サクラサク



「そろそろですね−」

「まだ、でしょうかねェ」
この季節、多くの日本人の心は共通の関心事でつながっています…。



四季を感じることのできる日本。
どの季節にも景色があり、風情があって、五感を研ぎ澄ませながら
その移ろいを楽しめますが、とりわけこの時期の「桜」にはさまざまな
想いの眼差しが注がれているような気がします。



入学、卒業、就職、引越し…出会い、別離…
そして又出会い…を繰り返しながら私達の毎日があります。


学生でなくとも、何かの節目などを自分の定めた「卒業」と捉えて成長を
なす経験もあるように思います…。
そして卒業をした先にあるのは未知の世界です。
期待より不安なことの方が上回る場合もあるでしょう。


通い慣れた道や座り慣れた椅子、自分の所在を確かなものとしていた
ネームプレートetc…のようなものに包まれているのは居心地の
良いものです。

何かを卒業すると同時にそのようなものは消えてしまうこともありますが、新たに展開する未知の世界で又、居心地の良い場所を人は創り始めていきます。



桜の開花を心待ちにする私達。

その桜への想いはさまざまでも、「桜」からは必ず受け取ることができる
のが植物の生命力。



美しく、逞しく、生命力に溢れる桜の木を仰ぎ見ては憧れ、大地を蹴る自分の
足の強さをおもわず確かめたくなる季節です…

| 季節の便り | 14:42 | ↑TOP
  • 2010.02.04 Thursday

《節分》



節分は旧暦だと12月の大晦日。立春(新春)の前日にあたります。

豆を打って邪気を祓い、新しい一年を迎えるとされた行事が豆まきの由来だそうです。

玄関先には柊を飾って厄払いとしますが、この柊の葉は固くぎざぎざとして
花活けの際にも指をチクりと刺しますので、なるほど鬼が嫌うというのも納得します。


東京では一昨日に初積雪をみましたけれど、
立春を過ぎれば徐々に気温も上がって春めき、又それが待ち遠しくもありますね。

昨年の立春、生命の息吹と共に一瞬にして春を広げみせてくれた蘭の小花が
今年は一足先に目を醒ましていました。

真冬の日照も弱く気温の低い朝に突然、
雪洞のような暖かさに包まれた光りの中で静々と微笑むように花開き、
今年も嬉しい驚きと生命のメッセージを私に届けてくれたのです。



ところで、豆まき用として販売されている大豆が
年々美味になっていくように思っているのは食いしん坊の私だけでしょうか…


| 季節の便り | 14:04 | ↑TOP
  • 2010.01.05 Tuesday

恭賀新年

あけましておめでとうございます

躍動感に満ちた真っ赤な初日の出と共に、2010年お正月の幕開けと
なりました。

今年の元日は未明に月食が起こり、日本では「史上初」で明治以降では
例がない。という記事を目にしました。
でもそれ以前はどうだったのでしょう…

まだ人類が太陽や月などの天体に従って生活を営んでいた頃には
季節が巡って年の最初にあたる月の満月の日を一年の最初の日と決め
「正月」としていたのです。

人々が生活に`暦´をつくり始めた時も、太陽と月のリズムを基盤とした
太陰太陽暦(旧暦)でした。

明治6年に太陽歴に改められるまでは新月から新月までを1ヶ月として
いましたので、元日は常に新月(満月)だったのです。

いつもならば元旦の日の出にばかり心奪われ、大晦日の夜空に月を仰ぐことは
ありませんでしたが、『元日の月食』の記事を見たせいか昨年の大晦日には
ほぼ満月の大きな丸い輝きを上海の夜空に見上げていました。


さて2010年、この一年が良い年となりますように吉祥の『七宝』を
挙げてみたいと思います。
【瑠璃、玻璃、瑪瑙、金、銀、真珠、蝦蛄】

このような日本古来の宝物の輪が七宝にたとえられてきましたが、
帯の文様等では幾何学的な円形の配列になっていますね。
中国の八宝思想から発展した、打出の小槌,丁子,隠れ蓑,等々…
こちらも又『宝尽くし』と呼ばれて吉祥の文様とされております。
名称には含まれていませんが、中国の宝物といえば゛玉“の歴史が
最古かもしれません。
装飾品のみならず、富のシンボル、神事での法器や護身のお守りでも
あった゛玉器“。

新年のご挨拶とともに、今年の干支に因みまして中国商代晩期の
玉器を掲載いたしました。
本年もどうぞよろしくお願い申しあげます。

2010年 正月 吉日
結城 かづ子

| 季節の便り | 12:24 | ↑TOP
  • 2009.12.23 Wednesday

冬至…《一陽来復》





一年で最も日照時間が短い冬至は、「太陽のパワーが最も弱まる日」であると
昔の人々はとらえていたため、太陽の力の復活を祈る行事が営まれていました。

日本ではゆず湯に入り、カボチャを食べると一年間は無病息災でいられるという
その慣習は現在の私達にも身近く感じることができます。

実際にカボチャはカロチンを豊富に含み、体内でビタミンAに変わることで
代謝を整えたり抵抗力をつけたりして、
冬季の風邪の予防や皮膚の整調に絶好の食べ物です。

ゆず湯はその豊かな香りで心が静まり、体を温めて風邪を引かない、
しもやけにならない等の薬効成分があります。

実はゆず湯に入るのは邪気を払う禊ぎの意味があり、
身と心を清めるために行われてきたといいます。


中国ではゆずやカボチャの果肉に共通する「黄色」に魔よけや災難除けとする信仰があり、
これらの黄色が太陽の力が弱ったこの日に人間を守ってくれるのだ、と考えられていたのでした。

同様に韓国では小豆粥を食べる風習があるのだそうです。

黄や赤の色は大いなる「太陽」を想起させ、熟れた柚子はそのまま小さな太陽のようにも思えます。

冬至を境に、翌日からは少しずつ陽の気が発つことから中国で「一陽来復」と称される節日でありました。


畳の一目ずつ程、日が伸びてくると教わりましたが、どの国であろうと太陽への人間の想いは等しく、切に望むものなのですね。

太陽の力が復活する日は「春を迎える前日」のごとく慶ばれていたことを、
私はあまり知らずに過ごしていたように思いました…



さて、今年も残りわずかとなりました。


“終わり“があるから次がはじまる。

―そうしてまた、私達は新しい歳を迎えることができます。


天地の恵みに感謝しながら、心身ともにすこやかに新年を迎えたいものです。





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