- 2012.04.10 Tuesday
サクラサク
「近所の郵便局の角を曲がったら、すぐそこにはもう新しい出会いが待っているの。」
と、作家の宇野千代女史は書かれていました。
(羨ましいほど‥に、)自他共に認める恋愛体質という女史が、
大の桜好きだったことはよく知られていますね。
日常で手にするものや、身近にあるもの様々も桜模様で満たされていたといいます。
ハンカチ、お扇子、湯呑みの柄等はもちろん、長襦袢、着物、帯…。
ご自身でもデザインを手掛けられ、季節を問わずサクラをお召しになられては、
きっと頬を桜色に染めていらっしゃったのでしょうね。
今朝、暖かい陽射しの下で満開の桜を仰ぎ見ました。
神田川沿いの桜並木は、枝々が川の流れに向かって張出しながら伸びています。
川面は朝日を反射してキラキラと輝き、桜の花には光りのシャワーが降りそそぐようです。
その美しさに心を奪われていると、にわかに遠い記憶へと誘われたような感覚になりました。
小学校の入学式か、それとも中学校の卒業式なのか…
おぼろげなシーンが頭に浮かび、桜の景色が重なります。
記憶の中の少女は、桜の樹の下で胸を張り、前を見つめています。
満開のサクラが放つ生命力と、同じくらいの力強さで大地を踏んで‥。
一瞬、垣間見えたその笑顔は、現在の私にとても眩しく映りました。
眩しくて目を細め、もう一度そっと目を開けたら‥。
そこには暖かい朝日を受けて笑うように咲いている、淡いピンクの桜の花がただただ揺れているばかりでした―。